第1回「大停電と地震予知」

***ネイチャー2004年8月5日号より

 最近のネイチャーでは、他の雑誌からのニュースを要領よくまとめた「research highlights」というページが目に付く。サイエンスにも同様のページがある。そういえば日本のニュートンにもあったっけ。

 2003年8月のニューヨークといえば、サイトにも出ているように、オレはニューヨーク滞在中に大停電に巻き込まれてパニックに・・・ならずに余裕をかましていた。小さなホテルだったが、エレベーターも動いていて、水も緊急食も豊富にあったからだ。

 で、ニューヨーカーも観光客も大悲鳴をあげていたとき、オレのようにホテルで水風呂に浸かってボーッとしていた奴もいたわけだが、驚いたことに、血眼になって飛行機に飛び乗って「科学研究」をやっていた連中がいた。

 Lackson T. Marufuという人物と同僚たちは、環境化学の専門家であり、大停電の当日、ペンシルヴェニア上空と停電していない地域で空気のサンプルを集めまくった。そして、2002年の夏に採取していたサンプルと照合してみた。

 大停電のせいで、発電所が100基以上も停止していたわけで、当然のことながら、空気はきれいだった。数字をあげると、

   オゾン=50%減
   二酸化硫黄=90%減
   視界=40km改善

 この「実験」結果は、理論モデルによる計算よりも「きれい」だったことから、汚染物質の放出の理論モデルの見直しが求められている。

(原典:Geophys. Res. Lett.31, L13106(2004))


***サイエンス2004年8月27号より

 ネイチャーには「News and Views」という欄があって、日本でも「知の創造」として三巻まで出たが、サイエンスにも同じような欄があって、それは「Perspectives」という。「展望」といった感じだろうか。(サイトの掲示板でも紹介されていましたっけ)

 オレは地震学には無知なのだが、なにせ地震大国に住んでおるわけだし、いつ来てもおかしくはない関東大震災が事前に予知できれば、こんなに嬉しいことはない。実際、何十万人の生死を分けるかもしれない。

 これまで、地震予知は不可能だ、というのが常識のようになっていたし、オレも、そうだと思っていたが、ここにきて、アッと驚く大逆転がありそうな気配だ。

 S. Tanakaらが発表した論文では、なんと、月の潮汐力が地震の引き金になっているかもしれない、という新説が提示されているのだ。ただし、どんな場合でも潮の満ち干と連動して地震が起きるわけではなく、プレート・テクトニクスによる歪みの方向が潮汐力の方向と一致した場合にだけ起きるのだという。
 
 とはいえ、分析された100の観測例のうち、実際に潮汐が引き金になったのは13例だというので、はたして、これが高い的中率というべきかどうか、やはり、素人にはわからんな。

 この手法によって本当に地震予知が可能になるのならば、それなりの予算をつぎ込んで実用化してほしいものだが。

(原典:Earth Planets Space 56, 511(2004))


***ネイチャー2004年8月26日号より

 男ってぇのは、赤の他人の給料を気にする種族らしいが、コーネル大学の化学者でノーベル賞も受賞しているRoald Hoffmannを含む10名の化学者たちが連名で米国化学学会(American Chemical Society)あてに抗議文をつきつけている。

 なんでも、米国化学学会の常務理事(会社でいえば社内重役か?)が、76万8千ドルも給料をとっていたというのである。年収だが、日本円にして8千万円以上だぜ、コレ。

 ちなみに、米国物理学会の場合、同じ職にある人の年収は20万ドル以下。それでも2000万円だから、高給取りだと思うけどなぁ。

 驚くのは、学会の事務局の反応だ。なんでも、学会は、他の商業出版社と競合しないといけないし、学会の規模も大きいので、これくらいの給料は妥当だ、というのである。そして、その証拠(?)として、ElsevierとかWileyといった大手出版社の重役連が50万ドルから150万ドルといったレベルの給料をもらっていることをあげている。

 うーむ、アメリカの出版社って、そんなに儲けているのか? いくらなんでも5千万円とか1億7千万とかいう数字は・・・ふう、こんなニュースを読むのはやめて、オレも仕事に戻るとするか(Sigh)

 今回は、英語ネタは回避しました。時々、英語解説も入れるようにいたしますので。それじゃ、また。


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