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エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊 |
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死ぬ権利
香川知晶著
★★★
カレンという二十一歳の昏睡状態の女性の生死をめぐって、生命倫理、脳死、信教の自由、政治、そして十年間の裁判を通して、「死ぬ権利」の是非を問う。
(勁草書房・3300円)
世界でもっとも美しい10の実験
ロバート・P・クリース著
★★★
美しい実験の基準は、基本的、効率的、決定的の三条件を満たしているものだという。世界的に有名な科学実験を、まるで美術鑑定書のように解説してくれる。
(日経BP社・2000円)
ピタゴラスの定理でわかる相対性理論
見城尚志・佐藤茂著
★★★★
誰もが知っているピタゴラスの定理から始めて、楽しく数学を学びながら、アインシュタインの特殊相対性理論が理解できるように、かなり工夫を凝らした入門書。
ニュートンとアインシュタインの世界観の差は、ちょうど、ユークリッド幾何と非ユークリッド幾何の差に相当する。
非ユークリッド幾何には、球面幾何と双曲幾何があるが、特殊相対性理論と深く関係するのは、後者の双曲幾何だ。
なんだか難しく聞こえるが、ようするに、平らな紙の上で幾何学をやるか、地球のような球面の上でやるか、あるいは、馬の鞍のような双曲面でやるかのちがいなのだ。
とにかく、初心者に徹底的にわかりやすく、という著者たちの配慮が感じられ、二色刷りの豊富な図版も理解の助けになっている。
コラムでは、版画家のエッシャーの「円の極限と地獄」の構造が、双曲幾何の応用であることが示されたりして、実に勉強になる。
特殊相対性理論のグラフにしても、ブリーム線図、レーデル線図、ミンコフスキー線図と、「オタク」的な詳しさで説明されており、数学好きにはたまらない一冊だといえよう。
(技術評論社・1580円)
(日本経済新聞 2006年11月1日掲載)
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