エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊

魂の重さの量り方
レン・フィッシャー著 林一訳
★★★

  一風変わった視点からみた異端の科学史。著者もイグ・ノーベル賞(ノーベル賞のパロディ)を受賞している。正統派の科学とはちがうものを読みたい人におすすめ。林一訳。
(新潮社・1800円)


恐竜野外博物館
ヘンリー・ジー、ルイス・V・レイ著
★★★★

  化石などの科学的知見を元に、もしも恐竜を野外で観察できたらどうなるか、というコンセプトで書かれた本。想像力を刺激されて楽しい。小畠郁生監訳、池田比佐子訳。
(朝倉書店・3800円)


猫のなるほど不思議学
岩崎るりは著
★★★★★

 そんじょそこらの猫の雑学本とは一味ちがう、硬派な「猫の科学書」の登場だ。猫のルーツに始まり、セックスライフや遺伝や食事まで、あくまでも科学の観点から、綿密な調査と取材にもとづいて書かれている。
「人を飼い馴らしたあげくに、猫はいつでもグウタラ暮しています。猫はいわば、ナマケモノを装う賢者なのです。」
 猫好きにはたまらないユーモアたっぷりの記述がいいが。
「中途半端な高さは死傷をまぬがれないが、高層階からの落下は意外にも軽傷または無傷という傾向がみられる」
 フライング・キャット・シンドロームのような知識も豊富に語られる。
 きわめつけは、第四章「猫種と相性」だろう。ブリーダーとして猫種について知り尽くしている著者の面目躍如といったところで、ほのぼのとしたイラストとともに大いに楽しめる。
 著者は、この本を3年前から書き始め、脳腫瘍の手術から奇跡的に生還し、見事に完成までこぎつけたそうだ。本書を読んで、作家の底力をひしひしと感じた。
 外猫の集会など、動物行動学に焦点をあてた続編を切に望む。小山秀一監修。

(講談社ブルーバックス・1040円)

(日本経済新聞 2006年3月29日掲載)