エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊

フュージョン
G.マクラッケン、P.ストット著
★★★★

  次世代のエネルギーとして期待が高まる核融合。一般向けと教科書の中間に位置する本。きちんと理解したい人にはオススメの良書だ。村岡克紀、飯吉厚夫・訳。
(シュプリンガー・フェアラーク東京、3000円)


使える!確率的思考
小島寛之著
★★★★

  確率思考により、不確実な世の中を生き抜くための書。たった一つの事例から確率をはじきだす方法が、スパムメールの撃退につかわれているなんて、知ってました?
(ちくま新書・700円)


宇宙怪人しまりす医療統計を学ぶ
佐藤俊哉著
★★★★

 一ページ目から「宇宙怪人しまりすの誕生」と始まるので、度肝を抜かれる。地球を征服したあとの人間の健康維持のため、「りすりす星」からの征服者たちは、「疫学、医療統計学の知識をノドから手が出るほど欲しがっている」という設定なのだ。
 とはいえ、本書は真面目な疫学・医療統計学の教科書である。
 りすりすたちは、征服した惑星の住民を自由にあやつるための「イエッサー」なる機械をもっている。読者である私も、いつのまにか、そのイエッサーを装着されて、最後まで読まされてしまったにちがいない。
「割合」という言葉と「率」という言葉のちがいから始まって、薬を呑んでも呑まなくても1週間で風邪が治る話などが出てきて、あれよあれよという間に医療統計の世界に引きずり込まれる。
 もともと、著者が奥さんに「医療統計をしらない〈宇宙怪人しまりす〉というのがやってきて医療統計を一から勉強する、という本をあなた書きなさい」といわれて本書は誕生したらしい。
 宇宙怪人と一緒にもっと勉強したくなった。切に続編を望む次第である。(イエッサー装着中の竹内薫)

(岩波書店・1200円)

(日本経済新聞 2006年2月10日掲載)