エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊

またまたへんないきもの
早川いくを著
★★★

  大ヒットした前作より、環境問題への言及が多く、その分、単純に笑って楽しんで、ハイおしまい、という作品ではない。でも、著者のユニークな描写は健在だ。寺西晃・絵。
(バジリコ・1500円)


地球遺産巨樹場バオバブ
吉田繁(写真)
★★★★

  美しい。切なくなるほど優しいバオバブの木々が、さまざまな表情で映し出された写真集。『星の王子さま』の挿絵も載っているが、実際の写真のほうが、より幻想的だ。
(講談社・3300円)


不思議な数πの伝記
アルフレッドS.ポザマンティエ、イングマル・レーマン著、松浦俊輔訳
★★★★★

 小学生に「π=3」と教えてもいいかどうか、議論が沸騰したのも記憶に新しい。そもそも、なぜ「π」という記号を使っているのか、知っている人はどれくらいいるのだろう?
 本書は、πという数字の誕生から現在にいたるまでの「伝記」であり、πに取り憑かれた数学者や数学ファンの遊びと闘いの記録でもある。
 本書はまさに「意外性の連続」だ。たとえば、あたなは次のような問いにいくつ、答えられるだろうか?
①アルキメデスはπを何桁まで求めていたのか?
②πr^2という円の面積の公式はどうやって求めるのか?
③(タイヤの前身の)コロの上の物体は、コロが一回転すると、どれくらい進むのか?
④世界各国では、どうやってπを暗記しているのか?
 そして、きわめつけは、本の終わりに登場する「地球の腰なわ」の話である。あまりの意外さに腹を抱えて笑ってしまった。(あえてここに詳細は書かない!)
 数学書にもさまざまなレベルがあるが、本書は、算数の知識だけで誰でも読めるほんまもんの「娯楽書」だ。

(日経BP社・2200円)


(日本経済新聞 2006年1月25日掲載)