エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊

自由は進化する
ダニエル・C・デネット著
★★★★

 本書は巻末の訳者解説が絶妙。後ろから読み始めるのも一つの手だろう。「自由とはシミュレーションのツールである」という訳者要約は的を射ぬいているかも。山形浩生訳。(NTT出版・2,800円)


エピジェネティクス入門
佐々木裕之著
★★★

 聞き慣れない言葉だが、エピジェネティクスは、三毛猫やアサガオの模様から癌の秘密まで握っているらしい。ヒトゲノム計画の次にエピゲノム計画が必要なことを実感した。(岩波書店・1,200円)


旭山動物園の奇跡
週刊SPA!編集部編
★★★★★

 「行動展示」で全国的に注目を浴びている旭山動物園だが、十年ほど前は、史上最低の入園者数を記録し、閉園の瀬戸際まで追いつめられていた。
 この動物園には、常に理想と希望が存在していた。その理想像は具体的なレポートやイラストとなり、のちに「奇跡を起こした14枚のスケッチ」として有名になる。
 でも当時は、「夢の動物園から覚めてみれば、古びた獣舎が建ち並ぶ、現実の動物園が待っていた。すでに開園から25年。各施設の老朽化も限界に近づいていた。」
 そんなときに襲いかかった悲劇が、動物園で一番人気だったローランドゴリラの突然死。死因はエキノコックス症だった。
 この事件を公表したことにより、ただでさえ右肩下がりだった入園者数がさらに減少し、ついには、秋の行楽シーズンを前にしての途中閉園。
 こんな「旭山動物園にとっての最大の危機」を、彼らがどう乗り越えていったのか。そして日本最北の動物園が入園者数日本一となるまでの軌跡が、感動的に、そして読み易く描かれている。
 関係者へのインタビューも充実し、動物たちの生き生きとした写真も美しい本である。

(扶桑社・1,048円)


(日本経済新聞 2005年7月7日掲載)