エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊

ガイアの素顔
フリーマン・ダイソン著
★★★

 天才物理学者ダイソンのエッセイ集。冒頭のSF小説から最終章まで、極上の「知」との出会いにあふれている。後半の人物伝が特にオススメ。幾島幸子訳。(工作舎・2,500円)


寄生虫博士のおさらい生物学
藤田紘一郎著
★★★★

 生物の最小部品である細胞から、身体を守る免疫機構まで、楽しい語り口で解説してくれる。著者が専門とする寄生虫の話も折り込まれた「おさらい」にふさわしい良書。(講談社・1,600円)


科学者は妄想する
久我羅内著
★★★★

 科学には、新聞や学術雑誌にはあまり発表されない奇説や珍説が存在する。秘密のベールに包まれた、科学のグレーゾーンである。人は、それを「トンデモ」と評して嗤ったり、「神の啓示」と呼んで畏れたりする。
 そうした諸説を紹介する本書の内容のほとんどを、実は私は出版前に読んでいた。著者が配信している「奇天烈科学・飛んでる博士列伝」というメールマガジンに掲載されていたからだ。
 本書は、実に奇妙な科学のグレーゾーンを体験させてくれる。たとえば、株価変動を予測する人たちは「予知能力」をもっており、それは物理学のカオス理論で説明できるのだそうだ。あるいは、ニュートンが聖書研究にのめり込んで、この世は西暦二〇六〇年に滅亡する、と予言したことも驚きだ。さらには、宇宙から飛来する「ストレンジ物質」が地球を突き抜けたときに蟻の大きさくらいの穴があいて、局地的な地震の原因となるという説まで飛び出す。
 真面目な博士たちによる妖しい研究の数々。でも、その中から次世代の科学理論として生き残るものが出てくるのだ。たまには肩の力を抜いて科学の裏話を読むのも乙なものかも。

(日経BP社・1,300円)


(日本経済新聞 2005年5月26日掲載)