エンジョイ読書 目利きが選ぶ今週の3冊

高校数学でわかるシュレディンガー方程式
竹内淳著
★★★

 シュレディンガー方程式は、現代科学の基本中の基本だ。本書は「お話」レベルから一歩踏み込んで本当の「数式」を知りたい人のための絶好の入門書だ。(講談社ブルーバックス・861円)


生きる力、死ぬ能力
池田清彦著
★★★

 死はヒトが避けて通ることのできない終着点だ。でもそこから逆に生きることの意味が見えてくる。構造主義生物学の旗手が軽妙な文体で「生と死」を深く語り聞かせる。(弘文堂・1600円)


福沢諭吉の「科學のススメ」
桜井邦朋著
★★★★

「今年は国際物理年なのです!」最近、私は咽を枯らして叫んでいる。講演などのたびに国際物理年の認知度を調査しているが、ロゴマークを知っている人さえほとんどいないありさまに愕然とさせらえる。
 科学技術立国を謳う日本では深刻な科学離れが進行中なのだ。
 そんな惨状を憂える物理学者が福沢諭吉の忘れられた名著を発掘してくれた。「学問のすゝめ」や「文明論之概略」を読んだことのある人は多いだろうが、「窮理図解」という書物はどうだろう。「窮理」とは今でいうところの「物理」のこと。
「福翁自伝」で「東洋になきものは、有形においては数理学と、無形においては独立心と、この二点である」と日本の教育を痛烈に批判した諭吉は、慶應義塾の講義にも積極的に窮理学を採り入れていた。
「窮理図解」は、温度計の原理からニュートンの万有引力まで、すべてイラスト入りで解説してくれる。
 著者は高エネルギー物理学の第一人者で、現代科学の観点からの解説つき。原典と現代語の対訳になっていて、誰でも読めるよう工夫されている。
「科学する心」を教えてくれる一冊といえよう。

(祥伝社・1000円)


(日本経済新聞2005年4月28日 掲載)