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目次 [第1章] たけし×竹内 『コマネチ大学数学科』を語る ・数学の楽しさを番組にしたかった ・低予算のわりに苦労の多い番組 ・三者三様の解き方がおもしろい ・コマ大チームに共感するオタクの人たち [第2章] たけし×竹内 映画を語る ・たけし映画はデルタ関数だ ・映画は数字を応用して撮る ・芸大教授たけしの数学的講義 ・数学は発明されたのか、それとも発見されたのか ・数学と物理学の違いとは ・問題をどう解くか ・0と1との間に横たわる概念のギャップ [第3章] たけし×竹内 数学のおもしろさ楽しさを語る ・レストランの勘定さえ計算できない? ・四桁の数、四つを10にするゲーム ・英語の教科書を使って一石二鳥 ・数学から表現を学ぶ ・回答から問題を考え出すような出題を ・本当に身近な数学の世界 [第4章] たけし×竹内 数学の何問に挑戦する ・ファインマンが作った究極の覆面算 ・二人で覆面算に挑戦する ・二人で図形問題に挑戦する |
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『コマネチ大学数学科の<ミニ>舞台裏』:竹内薫 1.番組の題名はどうして決まったの? 当初、私が聞いていた番組の名前は「たけしが愛した数式」というものだった。本にも仮題があるが、テレビ番組にもある。それが、どういう経緯で「たけしのコマネチ大学数学科」に変わったのかは不明だが、もしかしたら、たけしさんのセンスが光ったのかもしれない。 「たけしが愛した数式」は、もちろん、「博士が愛した数式」のもじりだが、今になって振り返ると、「コマネチ大学」のほうが断然いい(笑) 視聴者(読者)のみなさまは、どう思われますか? 2.どうして竹内おじさんが解説に起用されたの? 制作会社のイーストは、最初、「虚数の情緒」などの著書で有名な数学者の吉田武さんに出演を打診したらしいが、断られ、なぜか、私の名前を教えられたのだという。吉田さんとは面識がなかったのだが、「あのサイエンスライターなら解説に合っているだろう」ということだったのかもしれない。 いずれにせよ、私にとっては、物理などを扱う科学番組ならいざしらず、数学そのものとなると、かなりの不安がつきまとった。 テレビで解く問題は、10分間という制限時間もあるし、解説自体はなんら問題なかったが、世の中は、そんなふうにはできていない。 世の中は、すべての人間にレッテルを貼るようにできている。 私は、物理学出身の科学作家(サイエンスライター)なのであり、あくまでも「数学者」とはちがう。 仕事からいえば、科学作家に専念する前に、かなり長い間、数理モデルをつかった広告視聴率予測プログラムを書いていたし、広い意味での「数学屋」であることは事実だ。 でも、世間の目が許すとはかぎらない。 そこで・・・。 3.どうして中村先生は四回目からの出演なの? 数学科を出ている中村亨さんの出番となるのである。 もともと、中村さんは茂木健一郎の高校時代の同級生なのだ。私は、物理学科のときに茂木健一郎と同級生だったので、以前、一度だけ夕食を共にしたことがあった。 それを思いだしたので、すぐにメールで連絡をとってみた。 中村さんは、裏方で手伝ってくれると言ってくれたが、当初、出演そのものは遠慮する、というスタンスだった。 そこで、私は、一計を案じ、中村さんをとにかくスタジオに引っ張り出して、私が一回目と二回目の収録をするところを見学してもらった。 私もテレビ出演は、ほとんど始めてだけれど、数学の楽しい解説なんだから、大丈夫だ、と説得を重ねて、いつのまにか、四回目の収録からは、私と中村さんとで交代で解説を受け持つことにしてしまった。 つまり、私が中村さんを騙して、引っ張り込んだのである(笑) 4.問題はどうやって選んでいるの? ところで、コマネチ大学の問題選定は、誰がどうやっているのか。 私と中村さんだけではなく、放送作家の斎藤さんやたけうちさん、安達さんが、毎週、問題を持ちよって、問題選定会議を開くのである。 選定会議に出席するのは、構成の人々のほかには、制作会社イーストのディレクターとプロデューサーの面々である。 私と中村さんはアドバイザー的な役割なので、その会議の結果を待って、問題を改変したり、修正したりする場合に助言をする。 現実に、みんなが持ち寄る問題の採用率は、(おおまかだが)5%程度だとお考えいただきたい。たいていの場合、私は、難しすぎて、スタジオで10分では解けないような問題を提案してしまうので、これまで、そのまま採用されたのは7問から8問くらいだと思う。 中村さんの提案する問題も同じくらいかな? とにかく、どんな問題にするかは、番組の面白さに直結しているので、侃々諤々の議論の末に決まるのである。大変なのです。 この問題は、出演者には、事前に知らされない。これは鉄則だ。たけしさんでさえ、事前には問題はわからないので、本書に書いてあるとおり、 「この番組は一生懸命、頭を使って前の日から出題問題の山をかけたりして、必死になって考えているのにギャラも安い」 というたけしさんの肉声につながるのだ。 でも、この鉄則が守られているからこそ、本当に面白い番組ができるのだと思う。 5.ホワイトボードは誰が書いているの? 問題解説のときに使うホワイトボードだが、私と中村さんが自分たちで書いている(笑) 私は、いつもK妻が手伝ってくれるのだが、スタッフに手伝ってもらうことは不可能なのだ。なぜなら、問題解説は、常に斬新さや驚きが求められるし、かなり複雑なこともあるので、内容を完全に把握している解説者自身でないと、記号などをまちがってしまうから。 そのかわり、字や図が下手かもしれないが、いつも、一時間くらいかけて書いている(ホント!)ので、お赦し願いたい。 6.衣装はスタイリストさんがつくの? 出演者の衣装はスタイリストさんがつくのだが、私と中村さんだけは自前(笑) それでも、スタジオ入りのときとはちがう恰好になることが多い。たとえば、ズボンだけはきかえたり、シャツだけ替えてみたり。 1月4日放送の特番だけでは、私も中村さんもタキシードを用意してもらった。 7.スタジオ入りはどうなっているの? 私も中村さんもスタジオには歩いて入る(笑) 最近は、テレビ局の中ではなく、各地に散らばったスタジオでの収録が多いようで、コマネチ大学も、都内某所に一年間借りているスタジオで収録がおこなわれる。 コマネチ大学の収録は火曜日なのだが、私は、2006年10月から同じ火曜の夜に日テレ系のNEWS ZEROに出演しているので、火曜日は、まず、コマネチで集中して、一汗かいてから、そのまま車で汐留の日本テレビに移動することになった。 8.〆さばヒカルさんについて・・・ 一年近く、番組に出演させてもらい、たけしさんとの対談本をやってもらって、それでも、一番印象に残っているのは、コマ大チームの〆さばヒカルさんの逝去であった。 私よりも十歳も若い芸人さんが亡くなったことに大きな衝撃を受けた。 そして、 「それでも、ザ・ショウ・マスト・ゴーオンなんです」 というディレクターの言葉が心に沁みた。 〆さばヒカルさんが亡くなって始めての収録では、たけしさんもタカさんもダンカンさんもコマ大チームも、みんなが、いつもよりもテンションを高めて「笑い」を取ろうとしているのがわかり、ショウビジネスの世界の厳しさを感じた。 もしかしたら、そうやって、ショウを続けて、お客さんに笑ってもらうことが、去っていった共演者への弔いになるのかもしれない。 9.ボツになった問題にはどんなものがあるの? これまでに五十問ほどの問題を選んだが、そのうち、採用されたのは7、8問くらいだ。ボツになったものとしては、 ・スピノールの問題 周囲とひもでつながっている物体を一回転させると「こんがらがる」が、二回転させると「ほどける」仕組み。数式にすると、虚数の指数関数の肩に行列が乗ることになって、難しすぎることと、どうやって問題にすればいいかが工夫できずに頓挫。 ・油分け 和算の古典的な問題でグラフによる面白い解法を教えてもらったので使えるかと思ったが、すでに「平成教育委員会」に出ていたのでボツ。(「平成教育委員会」とかぶる問題は原則として使えない!) ・自動車と壁 時速100キロで走っていたら、正面が壁であることに気づいた。ハンドルを右か左にきってよけるか、ブレーキを踏んで止まるか。壁までの距離を与えて、どちらの判断が正しいか計算させる問題。物理学の知識を使うので、純粋に数学といえないのでボツ。 というような感じである。 問題選定は、本当に大変なので、かなり、ネットでの数学パズルのサイトなどにお世話になっております! |
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